シングルマザーの生活費はいくらかかる？内訳や利用できる制度について

総務省統計局が公表した「2021年度 家計調査 世帯類型別(表3-6)」を参照すると、シングルマザーの平均生活費は1ヶ月23万円〜24万円程度であることがわかりました。
統計ではこのような結果となっていますが、世帯によって居住地や住居形態、子どもの年齢や人数はさまざまです。これらの要因によって、1ヶ月に必要な生活費は大きく変動します。
また、冠婚葬祭や入院などの急な出費や、貯蓄額などのデータは統計に反映されていません。
よって、1ヶ月23万円〜24万円という金額はあくまで目安であり、実際にはこの金額以上で見積もっておくことが得策といえるでしょう。

・母子家庭の1ヶ月の生活費（20歳未満の子どもの世帯）

母子家庭のうち、20歳未満の子どもがいる世帯を対象に調査が行われた結果、1ヶ月の平均支出額は236,839円となっています。

・母子家庭の1ヶ月の生活費（18歳未満の子どもの世帯）

母子家庭のうち、18歳未満の子どもがいる世帯を対象に調査が行われた結果、1ヶ月の平均支出額は228,912円となっており、20歳未満の子どもがいる世帯と比較すると平均額は低くなっています。

※総務省統計局公表の「2021年度 家計調査 世帯類型別(表3-6)」を参照

具体的にはこのような内訳になりますが、総務省統計局公表のデータでは、世帯人数の平均が2.93人となっています。
そのため、子どもが三人以上いる世帯の場合は平均額以上の支出が必要となることを想定しておかなければなりません。

・シングルマザーの収入

総務省による「全国家計構造調査」を参照すると、母子世帯（母親と18歳未満の未婚の子どもの世帯）のうち、母親が働いている世帯の実収入は261,587円、可処分所得は232,626円という結果が出ています。
夫婦と未婚の子どもがいる世帯のうち、世帯主が働いている世帯の実収入が543,373円であることと比較すると、半分以下の実収入であることがわかります。

母子世帯の実収入が261,587円と聞くと、必要最低限の生活費は確保できているのではと思う方もいるかもしれません。
しかし、厚生労働省が公表した「国民生活基礎調査」を参照すると、子どもがいる世帯全体の年間平均所得金額は、2014年以降700万円を超えるようになっています。
シングルマザーの平均年収が約200万円～300万円であることを踏まえると、子育てをしていくうえで必要十分な収入とは言い難いでしょう。
また、厚生労働省による「全国ひとり親世帯等調査」の、シングルマザーの就業形態についての調査結果では、正社員・パート・アルバイトとして就業している割合が80%を超えており、ほとんどのシングルマザーが働いていることがわかります。
なお、シングルマザーで無職の割合は全体で10%以下となっています。

・シングルマザーの貯蓄

上述のとおり、シングルマザーの実収入は子育てをしていくうえで必要十分とは言い難く、貯蓄額も少ない傾向にあります。
母子世帯の平均貯蓄額について、厚生労働省の「国民生活基礎調査」を参照すると、平均398万8千円という結果が出ています。
子どもがいる世帯全体の平均貯蓄額が732万8千円であることと比較すると少ないですが、平均約400万円という数字は決して低くないように思えるかもしれません。
しかし、厚生労働省による「全国ひとり親世帯等調査結果報告」を参照すると、シングルマザーの貯蓄額で最も多かったのは50万円未満であり、39.7%もの割合を占めています。
続いて、100万円～200万円と答えた方が10.5%、50万円～100万円と答えた方が6.6%となっており、貯蓄額200万円以下の世帯が60%近くを占めるという結果になりました。
つまり、一部の世帯が母子世帯全体の平均貯蓄額を押し上げているに過ぎず、貯蓄額が少ないシングルマザーが多い傾向にあることがわかります。
このことからも、ほとんどのシングルマザーが家計に余裕のない状態で子育てを行っており、貯蓄が困難な状況であるといえるでしょう。
子どもが大きくなるにつれて学費の負担も増えるため、最低でも月に1万円～2万円程度の貯蓄ができる状況が理想です。

・児童手当

児童手当とは、子育てに関する支援の適切な実施を図るため、家庭等における生活の安定に寄与することや、児童の健やかな成長に資することを目的とした制度です。
児童手当の実施主体は、公務員であればその所属庁、公務員以外の方は住所地を管轄する市町村となります。

対象児童

児童手当はシングルマザーに限らず、国内に住所のある0歳から中学校卒業（15歳になった初めの3月31日）までの子どもを養育しているすべての方がもらえるお金です。

支給額

児童手当の支給額は以下の通りです。

このように、児童一人あたり最大1万5千円の手当を受給できます。

なお、2012年から年収をベースとした所得制限限度額が設定されました。
児童を養育している方の所得が制限限度額を超えた場合、児童一人あたり月額一律5千円の特例給付が支給されます。
さらに、2022年10月支給分から所得上限限度額が設定され、所得が上限限度額を超えると児童手当が支給されないため注意が必要しましょう。

所得制限限度額および所得上限限度額は以下の通りです。

この表の通り、扶養している家族の人数によって所得制限限度額および所得上限限度額が定められています。
児童手当を申請する際は、所得がこれらの範囲を超えていないか確認するようにしましょう。

・児童扶養手当

児童扶養手当とは、児童扶養手当法にもとづき創設され、離婚などによってひとり親となった家庭に対して手当を支給する制度です。
ひとり親世帯の生活の安定と自立の促進に寄与し、児童福祉の促進を図ることを目的としています。

支給対象者

児童扶養手当の支給対象者は、18歳で高校を卒業するまでの子どもがいる方となります。
ただし、子どもに障害がある場合には対象年齢が20歳まで引き上げられます。
母子家庭や父子家庭はもちろん、両親に代わって養育している祖父母なども支給対象者です。

支給額

児童扶養手当の支給額は以下の通りです。

このように、児童扶養手当の支給額は監護する子どもの人数や支給方法によって変動します。

この支給方法には全部支給と一部支給がありますが、全部支給であれば満額受け取ることが可能です。
一方、受給者の所得が全部支給の所得制限限度額を超えており、かつ一部支給の対象範囲内であれば、支給額の一部を受け取ることができます。

児童扶養手当の所得制限限度額は以下の通りです。

これらの所得金額は、受給者本人の前年所得から判断されます。
児童扶養手当の申請を検討している方は、扶養している人数と所得金額を照らし合わせ、いくら支給されるのかを確認しておきましょう。

・ひとり親家庭の住宅手当

ひとり親家庭の住宅手当とは、20歳未満の子どもを養育している母子家庭(父子家庭)で、月額1万円以上の家賃を払っている方を対象に手当が支給される制度です。
ひとり親家庭の住宅手当は市区町村が独自に実施している制度であり、すべての居住地で受けられるわけではありません。
そのため、まずは居住している市区町村は対応しているのかを確認する必要があります。

支給対象者

ひとり親家庭の住宅手当は、支給対象となる要件も市区町村によって異なるため注意が必要です。
例えば、以下のような要件が定められています。

・対象となる住所地に6ヶ月以上居住していること。

・生活保護受給者ではないこと。

・母子家庭(父子家庭)であり、20歳未満の子どもを養育していること。

・住民票の住所地が申請先の管轄内にあること。

など、申請する際には要件をしっかり確認しておきましょう。

支給額

支給額についても、実施する市区町村によって異なります。
一般的には、月額で5千円～1万円程度のお金がもらえるケースがほとんどです。
例えば、以下の市区町村ではこのような支給額となっています。

・東京都武蔵野市：1万円

・神奈川県鎌倉市：家賃から1万5千円を控除した額を支給。ただし、限度額9千円。

・千葉県君津市：限度額5千円

ひとり親家庭であり、かつ20歳未満の子どもを養育している場合には、居住している市区町村が住宅手当を実施しているか確認しておきましょう。

・ひとり親家族等医療費助成制度

ひとり親家族等医療費助成制度とは、親が離婚または死亡するなどした家庭の児童に対して、医療費の自己負担額の一部を助成する制度です。
各地方自治体によって実施されている制度であるため、利用する際は要件などを確認しておく必要があります。

助成対象者

ひとり親家族等医療費助成制度の支給対象となるのは、18歳に到達してから最初の3月31日を迎えるまでの子どもを養育している場合となっています。
父母や子どもだけでなく、子どもを養育している方も支給対象です。

助成額

助成額は、医療保険の自己負担額から一部自己負担額を控除した金額となっています。
そのため、どれくらいの額を受給できるかは入院状況などによって変動します。
しかし、保険診療の範囲内であれば、基本的には自己負担額の全額について助成されるケースが多いようです。
ただし、健康診査や予防接種など、保険適用外のものは助成対象外となるため注意しましょう。

なお、ひとり親家族等医療費助成制度にも所得制限限度額が設けられています。
各地方自治体によって金額は異なりますが、ここでは大阪市を具体例としてご紹介します。

所得金額から各種控除を差し引き、所得制限限度額の範囲内であれば助成対象となります。

・こども医療費助成

こども医療費助成とは、保険診療が適用された医療費や訪問看護利用料につき、自己負担額の一部を支援する制度です。
申請要件や助成内容は、実施している各地方自治体によって異なります。

助成対象者

0歳から18歳(18歳になってから最初の3月31日を迎えるまでの間)で、国民健康保険や被用者保険に加入している子どもが助成対象となります。

また、以下のケースなどに該当する場合、助成対象外となることがあります。

・生活保護受給者の方

・ひとり親家庭医療費助成制度の助成を受けることができる方

・その他の公費によって、医療費の全額支給を受けることができる方

・児童福祉施設等に措置入所している方

助成額

助成額は保健医療が適用された医療費や訪問看護利用料、実施主体となる地方自治体によって異なります。
また、こども医療費助成では一部自己負担額が定められていることが特徴です。

例えば、大阪市では一つの医療機関ごとに、1日あたり最大500円の自己負担額が必要です。
ただし、一部自己負担額が必要とされえているのは1ヶ月に2日が限度となっており、3日目以降は自己負担なしで診療を受けることが可能です。

なお、こども医療費助成においても所得制限限度額が定めらており、金額は以下のとおりとなっています。

ただし、0歳から12歳までの子どもに関しては所得制限がかかりません。
これらの要件は実施している地方自治体によって異なるため、公式サイトなどで事前に確認しておきましょう。

・生活困窮者自立支援給付金

生活困窮者自立支援給付金とは、新型コロナウイルス感染症の影響などで休業を余儀なくされ、生活が困窮している世帯に対して支援を行う制度です。

支給対象者

生活困窮者自立支援給付金を利用するには、以下の理由で緊急小口資金等の特例貸付を利用できない世帯である必要があります。

・緊急小口資金および総合支援資金の初回貸付を借り終えた世帯

・緊急小口資金および総合支援資金の初回貸付を、2022年12月までに借り終える世帯

・総合支援資金の再貸付が不承認となった世帯

・総合支援資金の再貸付の相談をしたものの、申込みに至らなかった世帯

上記の世帯に該当し、かつ以下の要件をすべて満たす必要があります。

・「①市町村民税均等割非課税額の1/12にあたる額」と「②生活保護の住宅扶助基準額」の合計額が、収入を超えていないこと。

・資産額が「①市町村民税均等割非課税額の1/12にあたる額」の6倍以下であり、かつ100万円以下であること。

・生活の自立に向けてハローワークを利用した熱心な求職活動を行い、給付終了後も生活の維持が困難と見込まれる場合には、生活保護の申請を行うこと。

支給額

生活困窮者自立支援給付金では、世帯の人数によって支給額が変動し、3ヶ月間にわたって支援を受けることができます。

所得制限限度額などは設けられていませんが、上述の通り収入などの要件が定められています。
生活の維持が困難な場合は、こちらの支援制度の活用も検討してみてはいかがでしょうか。

・離婚後の生活設計をしてから離婚する

離婚によってシングルマザーになる場合は、離婚後の生活設計について計画を立てておくことが重要です。
生活設計をしないまま離婚してしまうと、その後の生活が苦しくなる可能性が高くなってしまいます。
そうならないために現状の家計簿をつけ、生活費の内訳を把握しておきましょう。
家計簿をつけることで、離婚後の生活設計を具体的に検討することが可能です。
シングルマザーになった場合の支出を見積もり、収入の見込みが立ってから離婚することをおすすめします。

・安定した勤労収入を確保する

シングルマザーになると、養育費だけでは生活することが困難となります。
必ずしも正社員である必要はありませんが、これまで専業主婦だった方も安定した収入が得られる仕事を探していきましょう。
ただし、できれば社会保険に加入できる職場がおすすめです。
社会保険料によって手取り額は減ってしまいますが、急な病気や怪我で仕事を休むことになっても、傷病手当金を受け取ることができます。
老後に受け取れる年金も増え、国民健康保険や国民年金よりも負担額が少ないため、社会保険加入のメリットは大きいといえるでしょう。

・養育費の取り決めをする

シングルマザーとなった後は、元夫に養育費の請求をすることが可能です。
ただし、養育費に関する取り決めは必ず公正証書を作成しておきましょう。
公正証書を作成しておけば、もし養育費が支払われない状況になった場合に、給料などを差し押さえることができます。
また、養育費の取り決めがまとまらない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てることもできます。
解決できない場合は、離婚前であれば「離婚調停」、離婚後であれば「養育費請求調停」を申し立てることも検討しましょう。
さらに、養育費保証制度を利用するという手段もあります。
この養育費保証制度とは、もし支払いが滞った場合には保証会社に養育費を立て替えてもらえる制度です。
保証料を支払う必要はありますが、養育費確保の手段として注目を集めています。